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集中治療室情報サイト

ICUチーム

ICUチームの重要性

現在、日本集中治療医学会のHPでは”ICUにおけるチーム医療の重要性”について医療従事者向けに以下のようにコメントしています。

循環不全、呼吸不全、意識障害、腎障害、凝固障害などの臓器不全により、生死の境をさまよう患者に対する生命維持のための診療は、1990年台以降、長足の進歩を遂げました。その原動力の一つとして、各種の薬剤・機器を含めたICUというハードウェアの整備が進んだことが指摘できますが、現在、患者の予後改善に大きく影響するのはむしろソフトウェアの部分、すなわち専門トレーニングを受けたドクターやコメディカルがその診療に深く関与することが重要であるとされています(Pronovost PJ., et al. JAMA 2002;288:2151-62)。すなわち、臓器機能不全をきたした重症患者の予後改善のためには、最良の臨床研究データに基づき、高い質で効率の良い診療を行う集中治療専門スタッフからなる“ICUチーム”の存在が不可欠なのです。」

日本集中治療医学会 医療従事者の皆様へ https://www.jsicm.org/provider/icm.html

慈恵医大ICUチームの紹介

集中治療医

集中治療とは、“生命の危機にある重症患者さんを、24時間の濃密な観察のもとに、先進医療技術を駆使して集中的に治療するもの”であり、集中治療室(ICU)とは、“集中治療のために濃密な診療体制とモニタリング用機器、ならびに生命維持装置などの高度の診療機器を整備した診療単位”と定義されています(今井ら. 日本集中治療医学会雑誌 2009;16:503-504)。この分野の高度な知識を持ち、専門的な訓練と実践を積み重ね、研究を行う専門医師を集中治療医すなわち”Intensivist”と呼びます。集中治療医はICUチームの一員として質の高い全身管理を提供するためにチームを指揮し、患者さんの予後を改善することを主な役割としています。

また、集中治療医は生命維持治療の専門知識を持っていると同時にその限界も知っています。そのためチームを率先して「期待される治療の効果に見合わない過剰な医療が患者さんの意思に反して続けられていないか」などといった医療倫理に関わる問題の解決にも積極的に取り組んでいます。

ICU専従看護師

集中治療室における看護師の役割としてまず大切なことは、他の医療スタッフとともに患者さんの命を守ること、患者さんの命を支えることです。命を守るためには、医師とは違う側面から細かな変化を逃さないよう患者さんに関わっています。患者さんが話す内容だけでなく、血圧、心電図、尿量、手足の温かさなど、私たちは五感を駆使して、患者さんの体の様子を評価します。何かよくないことが起きる予兆があると判断すれば、他の看護師とともに内容を共有し、医師に報告します。私たちは、早く察知し、早く対応することで、患者さんの集中治療における命を守ります。このような細かな体や心の変化に気づくために、1人の看護師が集中治療室で担当する患者さんの数は2名以内に制限しています。24時間、365日、看護師は交代しながらも、患者さんの近くに寄り添っています。患者さんの近くには担当看護師がいます、何かわからないこと、困ったことがあれば声をかけてください。

ICU専従臨床工学技士

医療の高度化、専門化を背景に、病院ではさまざまな医療機器が使用されるようになりました。そこで、医師は診療、看護師は看護に専念できるよう、医療機器の専門家として誕生したのが私たち臨床工学技士であります。私たちは医学と工学の知識を持つ「いのちのエンジニア」として、安全な医療機器を提供し患者さんの治療をサポートしています。

院内で広く使用されている医療機器に輸液ポンプがあります。これは、点滴用のスタンドに装着して、点滴を正しく投与するために使用します。他には、医療ドラマなどで見かける心臓の動きを観察する心電図モニタがあります。また、特殊なものですと集中治療室(ICU)などで使用する人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO:エクモ)装置、これらは命をつなぐ「生命維持管理装置」と呼ばれ、新型コロナウイルス感染の報道で名前を聞く機会が増えました。これら医療機器の操作や点検が私達の主な仕事になります。

人工呼吸器、ECMO装置は、呼吸機能を補助または代行して、患者さんの体を休める装置です。呼吸とは、肺という臓器で体のなかに酸素を取り込み、体の外に二酸化炭素を排出することをいいます。新型コロナウイルス感染の重症者は、この機能が障害されているケースが多いようです。障害の程度に応じて、人工呼吸器やECMO装置を選択して、症状が改善するまで連続して使用します。ここでの操作には小さなミスも許されないため、些細な変化も見逃すことがないよう、24時間体制で管理しています。

私たちは医療機器を介して、医師、看護師、その他医療スタッフと協力しながら、ICUチームの一員となり患者さんの安全をお守りしています。医療機器を目にしたとき、その先にいる私たち臨床工学技士のことを思い出していただけたら幸いです。

ICU専従薬剤師

当院ICUでは薬剤師が医療チームの一員として活動しています。ICUに入室される患者さんは重症であり、合併症も多く、血液浄化法などの特殊な医療機器が使用されることから薬剤の使用が通常よりも難しくなります。そのため薬物治療も複雑となり、薬剤の効果、副作用、相互作用などを適切に評価する必要があります。ICUに常駐する薬剤師は最適な処方提案や正確な薬剤使用の確認、薬剤の効果および副作用の評価を行い、「医薬品適正使用」のなかで重要な役割を担っており、薬の専門家として、医師、看護師、臨床工学技士などとともに多職種連携として、チームの一員として患者さんの治療に全力を尽くしています。

関連サイト

集中治療室における薬剤師の活動指針(日集中医誌 2020;27:244-7

リハビリテーションスタッフ

私たちのICU内の役割は、医師・看護師などの医療スタッフと協力して、入室されている患者さんの治療状況や身体機能に合わせて、動作や活動の支援をすることです。私たちは毎日、ICUの医師から治療内容の説明を、看護師から日中の様子やケアの状況などの報告を受け、リハビリテーション科医師の判断のもと、ICU内で可能な範囲のリハビリテーション治療の選択と実施をしています。患者さんによっては、手術後でできるだけ休息していたいという方もおられますが、治療上必要と判断されれば、医師による痛みのサポートを受けながら、多職種で協力して患者さんの「座る」、「立つ」、「歩く」といった活動を促していきます。また、息苦しさや痰が出しにくいというような症状がある場合は、それに対応した呼吸のリハビリテーション治療を行います。

 近年、治療段階に応じてできるだけ早く体を動かすことが推奨されています。しかし、患者さんにとっては身体的にも精神的に苦痛を伴うことがあります。私たちは、患者さん一人一人の入院前の生活スタイルとその時の治療内容を把握して、最適なリハビリテーション医療の方法を検討し提供するようにしています。また、ICUから一般病棟に移動する際は、必要に応じて主治医の指導を受けつつ、継続して退院までサポートしています。

 ICUに入室して治療を受ける方、ICUから退室して治療を受ける方、みなさんがそれぞれの生活目標に向けて活動できるように医療者への指導的な役割を含めて対応しています。

管理栄養士

集中治療室に入室する患者さんは多岐にわたり様々な侵襲が加わっています。このような患者さんに対しては、早期に消化管を使用することで予後の有意性が明らかになっています。

集中治療の一員として携わる管理栄養士は、患者さんの命を守るためにICU入室後に栄養評価を行ない、医療スタッフ間で情報共有し、患者さんの病態にあった食事内容や栄養剤を選定して適切な栄養管理に務めています。

関連サイト

・日本集中治療医学会 市民の皆様へ https://www.jsicm.org/public/