i-Care-U.net

患者さんとご家族のための

集中治療室情報サイト

ご家族の方へ

ICUスタッフとご家族の関係

患者さん、ご家族、ICUスタッフ間のコミュニケーション

患者さん、ご家族、ICUスタッフ間のコミュニケーションは、ICUにおいて非常に重要かつデリケートな要素です。

ICUで患者さんは一時的に話すことができないことが多く、はじめのうちはジェスチャーや視線でコミュニケーションをとることがあります。人工呼吸器使用中で声が出せなくても看護師が24時間ベッドサイドにいていつでも筆談や専用デバイスを使用してコミュニケーションをとることができます。何か要望があればいつでも看護師に訴えることができます。面会に来たご家族とも同様の方法でコミュニケーションをとることができます。

 ICU医師や担当診療科医師は必要な場合にこちらから連絡してご家族と病院で直接会って患者さんの状態を報告します。これらの話し合いはデリケートな問題を扱うことが多く、通常は個室で行われます。この時にわからないことがあれば遠慮せずなんでもご質問ください。また来院時に担当診療科医がいなくてもICU医師も患者さんの情報を共有しているのでICUでの病状の経過であれば簡単に説明することも可能です。いつでもお声掛け下さい。集中治療室では、情報の連続性を確保するために、いつも同じ人が医療スタッフから話を聞くことが望ましいです。

担当看護師は患者さんが今どんな状況に置かれているかを一番よく知っています。ベッドサイドで患者さんにとって今一番必要なことは何かを看護師に聞くことができます。

インフォームド・コンセント

通常、医療行為は患者さんのインフォームド・コンセント(医師と患者との十分な情報を得た(伝えられた)上での合意が得られた上で行われます。

 しかし、集中治療の現場では、患者さんの健康状態が非常に深刻で、すぐに介入しなければならない場面が多いのです。このような状況では、同時に患者さんに知らせて同意を得ることは不可能です。生命を脅かす状況の中では医師は緊急に必要な治療を行う必要があります。

 原則として、未成年者などの場合を除き、インフォームド・コンセントは本人から得なければなりませんが、鎮静剤や意識障害のために、患者さんが必要な治療法を十分に理解できない場合もあります。そのような場合に臨床現場では、医師は「患者さんが何を受けたいか」を知るために、さまざまな治療法の選択肢をご家族に提供します。

 患者さんの状態を十分に把握し、治療に関する情報をご家族と共有することで、患者さんの意思を尊重しつつ、医療の選択に関して最適なバランスを取ることができます。

ICUで最善の治療を選ぶということ

 私たちは入院前の生活にできるだけ近づけることを目的にICUと科学的根拠にもとづいた医療の項に示した手順で治療法を選択します。この時常に医療倫理の大原則に従い、目の前の患者さんに最善の医療がなされているか(「自律的な患者の意思決定を尊重せよ」という自律尊重原則にもとづき患者さんご自身の希望する治療のゴールが今どこにあるのか)を考えています。もし危機的な状況で本人の意思が確認できない場合には、ご家族に患者さんの意思を推定する手助けをしてもらわなければなりません(これまでの長い人生の中で築き上げた患者さんの価値観や人生観を知ることは私たちだけでは困難だからです)。

 大切な人の意思を推定するのは容易ではなく、ときには私たち医療者やご家族がにわかには受け入れ難いものであるかもしれません。私たちはご家族の方だけに決断を求めることはしません。私たちはご家族と患者さんの意思を最大限に尊重し、ともに最善の道を探していきたいと考えています。


医療倫理の大原則

「自律的な患者の意思決定を尊重せよ」という自律尊重原則、「患者に危害を及ぼすのを避けよ」という無危害原則、「患者に利益をもたらせ」という善行原則、「利益と負担を公平に配分せよ」という正義公平原則からなる。


選択肢の共有

患者さんご自身の意思表示ができない状況では、医師による臨床状態の情報と、ご家族による患者さんの希望の推定が、あらゆる治療法の選択を共有するための基礎となります。私たち医療スタッフはさまざまな治療の選択肢について、正確で完全かつ理解しやすい情報をご家族に提供することで、難しい選択であっても受け入れることができるような信頼関係を築いていきます。

医師と集中治療室の看護師は、ご家族に患者さんの状況を理解してもらうように努め、疑問や不安、恐怖に耳を傾けながら困難な状況にある家族に寄り添い、サポートします。非常に複雑な治療に関する問題(実施すべきリスクの高い処置、不必要または効果のない治療の中止など)はご家族と全ての医療スタッフで十分に情報を共有した上で最終的には医師の責任で判断を下します。

ICUの患者さんの治療に関する基本的な決定は、決して一人の医師が行うものではありません。日々状態の変化するICUの患者さんの治療方針は、ICU医師、担当診療科医師や看護スタッフの間で日々議論されています。