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患者さんとご家族のための
集中治療室情報サイト
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集中治療室の環境は他の病棟のそれとは大きく異なります。壁で区切られた部屋、モニターの音、特殊なベッド、多くのスタッフが出入りし特別な規則があります。それらは治療のために必要ですが慣れない人にとっては居心地が悪く、恐怖を感じることさえあります。それに加えて重症の患者さんを見舞うという不安が加わりご家族の方はさらに大きな精神的負担を感じることになります。
正確な知識があればある程度その負担は軽減し、厳しい状況に飲み込まれずに済みます。ここではICUの扉の向こう側にあるものを簡潔に分かりやすく説明します。これからICUに入る患者さんとご家族の助けとなる情報を提供できればと考えています。
集中治療室は英語でIntensive Care Unit(インテンシブ・ケア・ユニット)と言い、略してICU(アイ・シー・ユー)と呼ばれます。ICUは、入院治療が必要な患者さんの中でもとくに呼吸・循環(心臓)・意識・腎臓といった体の重要な機能に、命にかかわる問題があり、入念な観察・治療が必要な患者さんが利用します。いわば、病院のなかの病院、高度な医療の最後の砦です。当院のICUを利用する患者さんの多くは大きな手術を受ける方で、手術のあとにICUへ入室し、体の状態が安定するまでICUで治療を受けます。また、一般病棟に入院して治療を受けている間に、病気が進行したり合併症が起きたりして重症となった患者さんや、救急車で受診した重症な患者さんもICUへ入室して集中治療を受けます。
慈恵医大のICUは中央棟の5階に位置しており、20床の重症患者さん用のベッドが配置されています。ICUのベッドには、患者さんの体の状態を頻回かつ持続的に観察するためのモニターや、呼吸を助けるための人工呼吸器が備えつけられています。新型コロナ感染症で一躍有名になった体外式膜型人工肺(ECMO、エクモ)の機械や、腎臓の機能が低下したときに必要となる持続血液透析装置も常備しています。
これらの設備を用いて患者さんの診療にあたるのは、医師(集中治療専門医6名を含む12名)、看護師(認定・専門看護師2名を含む56名)、薬剤師(3名)、臨床工学技士(4名)からなるICUチームです。それぞれの患者さんのゴールに向けて、適切なタイミングで必要な医療を提供できるように、専属のスタッフが24時間体制で重症な患者さんの診療にあたっています。
身体にたくさんの異常が同時に起き、いろいろな薬や医療機器のサポートが必要になっている患者さんにどのような治療を行っていくかを決めるために、ICUチームは毎朝カンファレンスをしています。このカンファレンスには手術をした外科医や病棟で治療にあたった内科医も参加し、それまでの治療の流れを踏まえてICUでどのような治療を行うかを考えます。そして、カンファレンスで医療者が最善と考えた選択肢が、患者さんの希望・価値観に合っているかどうか患者さんとお話しします。ICUを必要とする患者さんは、意識の状態が悪いなど患者さん本人が希望を伝えることができないことも多いため、患者さんに代わってご家族に本人の希望を推しはかっていただくこともあります。
世界では、集中治療という医学の領域においてもさかんに研究が行われています。当院のICUも大学病院の使命として、集中治療医学の進歩につなげるべく医学研究を行っています。ICUで治療を受けた患者さんの経過を分析したり、国内外の多くの施設とともに大規模な研究を行ったりすることで、よりよい集中治療を提供し、患者さんをサポートできるように成長し続けようと考えています。